エピソード#3

個人向けSSDの時代を開く

エピソード第三弾では、サムスンの革新的なフラッシュメモリの歴史的な瞬間を見てみましょう。

前回のエピソードでは、サムスンが世界で初めて商用化に成功したSSD (solid-state drive)が、どのようにPCストレージの新時代を開いたかについて説明しました。 ここでは、主に サーバや企業向けアプリケーションに使用されていたSSDの技術が、どのように一般個人向けの日常的な デバイス に適用されることになったか見てみましょう。

個人向けSSDの大衆化を牽引するサムスンの努力

個人向けSSDの大衆化に関するイラスト画像

2006年、世界で初めてSSDを量産化したサムスンは、SSDのメリットである高速データ 接続や優れた電力効率性を武器に、企業向けサーバにSSD技術を 適用する試みを広げていきました。 高性能ノートパソコンにSSDを適用し、SSD 市場を パーソナルコンピュータの分野に拡張していきました。

個人向けSSDの市場拡張を目指すサムスンは、2010年にSATA個人向けSSD 470シリーズを、2011年には830シリーズをリリースしました。 830シリーズはわずか2か月で10,000台以上を 売り上げ、予測していたSSDの需要を立証する形となりました。

2011年、サムスンは米国に本社を置くSeagate TechnologyにHDD部門を売却し、SSDの研究開発に資源と努力を集中することを決定しました。 これは、多様な機能のSSDを開発し、消費者の様々なニーズに応えてより多くの選択権を 提供するためでした。

業界をリードするNAND技術を活用し、テラバイトSSDの時代を開く

サムスンは、3次元V-NAND技術を量産し、優れた性能や大容量の個人向けSSDを 合理的な価格で提供する土台を整えました。

業界をリードするNAND技術を活用し、テラバイトSSDの時代を開くことに関するイラスト画像

メモリセルについて簡単に説明すると、セルを家に例えるなら、データはそこに住む人と考えることができます。 最初はこの「隣人」同士仲良く過ごします。 家の数がさほど多くないため、十分な空間を確保することができるからです。 しかし、 時間の経過とともに人口が増え、家も多くなって、隣家との間隔が どんどん狭くなります。 不幸にも住人たちは(データは)、狭い空間が原因で騒音(干渉)問題に直面します。

こうした中、サムスンは、平屋建て(2D平面)の構造を業界で初めて3階建て(3次元V-NAND)の構造に変更し、このような問題を解決しました。 サムスンは、2013年に24-layer V-NANDを初めてリリースし、2014年に32-layer V-NAND、2015年に48-layer V-NAND、2016年に64-layer V-NANDおよび9x-layer V-NAND、2019年には1xx-layer V-NANDをリリースすることで、テラバイトレベルのSSDの時代を開きました。

個人向けSSDの歴史に関するイラスト画像

マルチビットのNAND技術と同種の最初のV-NAND技術をSSDに適用したサムスンは、個人向けSSD市場拡大の妨げとなっていた容量と価格という2つの大きな問題を解決したのです。 サムスンは、先端NAND技術を活用し、2012年10月に初めて3-bit MLC SSD (840シリーズ)をリリースし、2014年7月には世界で初めて3次元V-NANDを取り付けたSSD (850 PRO)シリーズを公開しました。

これにより、ユーザーはHDDをサムスンのSSDにアップグレードし、より便利で安全なコンピュータを使用できるようになりました。 起動からファイルの転送、アプリケーションの実行にいたる一般的なコンピュータ作業はもちろん、ゲームや高解像度編集のような高性能作業もスムーズに行うことができます。

現在はノートパソコンが世界的に主流となっています。 生成されるデータ量が 急増するにつれ、高速で持ち運びやすいストレージデバイスに対するニーズも高まっています。 サムスンの多様なポータブルSSD製品群は、従来のHDDに比べて高速で軽量なだけではなく、優れたデータの信頼性を保証する外付けストレージソリューションを提供することで、消費者の様々なニーズを満たしています。

2015年1月、サムスンはプレミアム3次元V-NANDを適用したポータブルSSD T1を公式発表しました。 名刺よりも小さく、重さが30gしかないT1は、ポケットやカバンなどに入れて持ち歩けます。 T1に続き、2016年2月にT3、2017年8月にはT5をリリースしました。 2018年にはついにポータブルSSD Xシリーズを公式発表しました。 NVMe™のインターフェースやThunderbolt™ 3のサポートを提供するXシリーズは、異次元の性能を実現し、外付けストレージソリューションの新時代を開きました。

NVMe™ (Non-Volatile Memory Express): SSD用ホストコントローラーインターフェースは、PCIe (Peripheral Component Interconnect Express)プロトコルを活用し、ストレージの性能を最大化します。
Thunderbolt™ 3: これはUSB-C接続を利用し、データの転送速度が最大40Gbpsに達する、インテルが開発したハードウェアインターフェースです。

サムスンが最近リリースしたT7 Touchは、高性能の完璧なセキュリティ機能を備えたポータブルSSDです。 このデバイスには有名なスマートフォンと同様の指紋認証センサーが内蔵されており、第5世代の512GB V-NANDと超高速NVMe™コントローラーにより非常にスピードが速いのが特長です。

PCIeをベースとしたNVMe™インターフェースで性能を極大化

SSDが市場に初めて登場したとき、消費者の購買意思はほぼ価格によって決定されていました。 しかし、時間の経過とともに消費者の関心は性能と容量にシフトし、サムスンはPCIeベースのNVMe™インターフェースを活用した革新を通じてSSDの速度を一層高速化しました。

一般的なデータ転送で多く使用するインターフェースであるSATAの帯域幅を1車線とすると、PCIeは6車線の高速道路に例えられます。 SATAに比べて帯域幅が広く、より迅速な応答を提供するPCIeをベースとしたNVMe™ SSDは、データ転送を次世代のレベルにアップグレードします。

世界で初めてPCIeベースのNVMe™インターフェースを企業や個人向けSSDに適用したサムスンは、2013年に業界初の2.5インチNVMe™ 企業向けSSDをはじめ、画期的な950 PRO 個人向けNVMe™ SSDを発表しました。 サムスンは、2016年に960シリーズ、2018年に970シリーズとポータブルSSD X5をリリースし、個人向けSSD市場でトップの座を維持しています。

サーバ向けや企業向けだけではなく、個人向けにも新たな高性能SSDの時代が幕を開け、世界各国の優秀なフラッシュメモリのメーカーが、その技術開発に拍車をかけています。