エピソード#2

HDDからSSDへのシフトをリードする

サムスンのフラッシュメモリ分野におけるリーダーシップの規模や範囲について詳しく知ることができる、エピソード第二弾です。
エピソード第一弾では、サムスンのフラッシュメモリの革新プロセスを紹介し、市場でトップとなった後、実に18年間その地位を維持しているNAND型フラッシュメモリの技術の発展について説明しました。 ここでは、サムスンが 世界で初めてSSD (solid-state drive)を商用化し、SSDが伝統的なストレージ 技術のHDD (hard disk drive)に代わって、 どのようにPCストレージのパラダイムシフトを起こしたかについて見てみましょう。
サムスンは、業界をリードするNAND型フラッシュメモリ技術を活用して PCストレージの世界に新たな扉を開きました。

ストレージ媒体のパラダイムシフトの始まり

ストレージ媒体のパラダイムシフトの始まりを示すイラスト画像

ストレージの進化には驚きしかありません。 比較的単純な紙をベースとする技術から始まって、 磁気テープをベースとする技術に発展し、HDDに、そして今はSSDへと進化を重ねています。

磁気 ディスクと機械式モーターをベースに動作するHDDと、NAND型フラッシュメモリを利用するSSDとの違いは、伝統的な LPプレーヤー、つまり電蓄とMP3プレーヤーとの違いを考えるとよく分かります。 HDDは電蓄がLP盤を読み込む方式に 似た方法でデータを認識する一方、SSDは デジタル方式で(類推を続けるために音楽または)データを処理します。 その違いはどこから生まれるのでしょうか。 この質問に答えるためには、まず各々の技術がどのように作動しているかを 見る必要があります。

簡単に言うと、HDDはプラッタという薄いマグネティックフィルムに磁気的な刺激を加えてデータの読み出し/書き込みを行います。 プラッタを物理的に回しながらファイルを認識するため、プラッタが特定速度に達すると音が大きくなり電力の消費も増加します。 したがって、コンピュータのCPUとRAMがいくら早く作動してもHDDがこれに追いつけなければ、 全体のスピードが遅くならざるを 得ません。

SSDでは、この問題を効果的に解決しました。 SSDはNAND型フラッシュメモリを使用するため、HDDに比べてデータの処理速度が 高速です。 SSDはHDDとは違い、 モーターなどの機械的な要素がないので 作動中も静かで信頼性が高く、温度も低いです。

HDDからSSDにシフトするためには、長期にわたり 研究を重ねる必要がありました。 初期のSSDの技術開発は、1970年代にまでさかのぼります。 しかし、膨大な費用やサイズの大きさの問題で、 数年間商用化には大変 苦労しました。

サムスンは、 初期段階からストレージデバイスのパラダイムが最終的にはSSDにシフトするという確信をもって、長い間革新を重ねてきました。 サムスンのこうした 情熱は、ついに2006年に32GB SSDを 搭載したPC で実を結びました。 当時リリースされたモデルは、Sens Q30PLUSのサムスンノートパソコンとSens Q1 ultra-mobile PCです。 SSDをベースとするPCという全く新しい市場を切り開いた 画期的な瞬間でした。

それまではフラッシュ メモリがカメラ、MP3、USBの機器にフラッシュドライブとして使われていたためです。 その当時は、 費用の問題をはじめとする様々な問題によって、SSDの技術をPCに利用しようとする人は ほとんどいませんでした。 しかし、サムスンはこのような常識にとらわれずにNAND型フラッシュメモリの技術を利用してSSDを開発し、その結果、価格競争力を持つと同時に、容易にノートパソコンに適用できることを証明しました。 当時、サムスンが開発したSSDの 容量は、20GBと30GB HDDに相当するもので、 起動 速度は5倍も速いものでした。

内蔵SSDで市場をリードする

NAND型フラッシュメモリ、DRAM、コントローラー ファームウェアのイラスト画像

SSDを構成する4大要素: NAND型フラッシュメモリ、DRAM、コントローラーと共に、動作をスムーズにするファームウェア NAND型フラッシュメモリを大量の 本を保管する図書館と仮定すると、コントローラーは本を整理する司書といえます。 言い換えれば、NAND型フラッシュメモリはデータを集めてSSDの容量を埋めていき、コントローラーはインターフェースやメモリ間のデータ移動をコントロールして読み出し/書き込みの順番を 設定し、ドライブの性能を 改善します。

サムスンにSSDの革新をリードするという意志と努力があったからこそ、 主な構成要素を自社で開発することができました。 また、このような意志と情熱を背景に、2006年から今日までグローバルなSSD市場でトップの座を守ることができました。 今日、サムスンは独自のSSD技術はもちろん、世界最大規模の生産 施設とNAND型フラッシュメモリの市場シェアを獲得し、SSDの性能や信頼性を左右する重要な要素であるコントローラーおよび ファームウェアの部門でもトップを走っています。

サムスンの革新的なNAND型フラッシュメモリ開発の歴史は 、世界初のSSDの商用化を実現する原動力となりました。 2006年にサムスンは、世界で初めて 40ナノ32GBのNAND型フラッシュメモリを商用化しましたが、これは当時流行していた「floating gate」アーキテクチャの限界を乗り越えたCTF (charge trap flash)の 革新的な設計が 決定的な役割を果たしました。

サムスンは、既に2010年代初め頃、超高容量半導体技術 によってギガバイトの時代からテラバイトの時代にシフトすると予測し、その中でNAND型フラッシュメモリ技術が 核心的な役割を果たすと確信していました。

そして、その予測はまもなく現実になりました。 サムスンは、2010年に個人向けSSDビジネスを開始し、2011年に23ナノの高速NAND型フラッシュメモリとその専用コントローラーを合わせたSSD 830シリーズを、また2012年には3ビットTLC (triple-level cell)のNAND型フラッシュメモリを合わせたSSD 840シリーズをリリースしました。 特にSSD 840 シリーズは、3ビットMLC NAND型 フラッシュメモリを性能と信頼性の優れたSSDに適用することは難しいという固定観念を破った点で大きな意味がありました。

サムスンは、2013年に世界で初めて3次元V-NAND型フラッシュメモリを量産して商用化に成功し、精密工程技術の限界を越える快挙を成し遂げました。 また、画期的な革新によってSSDの容量を増やし、2014年にはSSD 850シリーズをリリースして、3次元V-NANDをサムスンの個人向けSSDの標準に位置づけました。

2013年、サムスンは1TBに達する企業データセンター向けSSDを量産化し、2016年に15.36TB SSD、2018年に30.72TB SSDをリリースしました。 サムスンは32GB SSDを初めてリリースしてから12年目で、 既存モデルに比べて1,000倍の容量を誇る30.72TBストレージの企業向けSSDを開発することで、超高容量半導体の新たな扉を開きました。

サムスンは今も 革新を重ねながら、SSD市場とフラッシュメモリの技術をリードしています。

サムスンのSSDの歴史

  • 2005 ~

    2005

    SSDの開発に初めて成功

    2006

    初の量産 -
    16GBと32GB SSD
    ウルトラモバイルPC向け

    世界初
    SSDの商用化

    2006年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

    2007

    初の量産 -
    64GB PC SSD (2.5")

    2008

    初の量産 -
    256GB PC SSD (2.5")

    2008年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

  • 2010 ~

    2010

    初の量産 -
    512GB PC SSD (2.5")初のリリース:
    個人向けSSD 470

    2010年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

    2011

    リリース: 個人向け
    SSD 830シリーズ

    2011年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

    2012

    量産: 800GB
    企業向けSSD (2.5")
    初の量産 -
    3-bit MLC 512GB SSD (2.5")初の量産 -
    512GBの個人向け SATA SSD、
    840 PRO
    (2.5", Brand SSD, MLC NAND)

    2012年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

    2013

    初の量産 -
    1.6TBの企業向けSSD
    840 EVOをリリース
    (mSATA/2.5" Brand SSD,
    3-bit MLC NAND)
    初の量産 -
    960GBの企業向けSATA SSD

    2014

    初の量産 -
    1TB SATAの個人向けSSD、
    850 PRO
    (2.5", Brand SSD,
    32-layer3次元V-NAND)
    -初の事例:
    3次元V-NANDを適用 -
    個人向けSSD

    2014年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

  • 2015 ~

    2015

    リリース -
    ポータブルSSD T1
    を世界初リリース
    個人向けNVMe™ SSD、
    950 PRO
    (M.2, 32-layer3次元V-NAND)

    2015年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

    2016

    量産-
    世界最大容量
    (15.36TB)
    企業向けSAS SSD (2.5")
    量産-
    圧倒的な性能を誇る
    個人向けNVMe™ SSD、
    960 PRO (M.2)

    2016年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

    2018

    800GB Z-SSD、
    次世代向けの設計
    スーパーコンピューティングシステム、
    量産を開始
    - 世界最大の
    容量(30.72TB)
    企業向けSAS SSD (2.5")
    世界初のリリース -
    4-bit MLC SATA
    個人向けSSD、
    860 QVO (2.5")

    2019

    量産-
    世界最高速の個人向け
    NVMe™ SSD、
    970 EVO Plus (M.2)

    2019年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像

    2020

    初リリース -
    内蔵型指紋認識
    機能があるSSD
    ポータブルSSD T7 Touch

    2020年のサムスンのSSDの歴史を示すイラスト画像