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データ主導時代におけるAI及び次世代オートモーティブ向け最適化チップ、「eMRAM」の基礎理論

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今の時代を定義するキーワードとして、「データ」が欠かせない。全世界から生成されるデータ量は、毎年指数関数的に拡大している。AI、エッジコンピューティング、自動運転技術などの新しいアプリケーションの登場は、このような流れを加速化している。これに伴い、業界ではハイパフォーマンス・省電力・低コストの半導体チップの開発及び安定供給に対するニーズが高まっている中、パフォーマンス、コスト、信頼性の観点から、eMRAMが最適なソリューションを提供できる次世代製品として注目されている。 eMRAM(embedded Magnetic Random Access Memory)とは、埋め込みMRAMで、磁性体素子を用いた不揮発性メモリである。マイクロコントローラ、システムオンチップ(SoC)など、システム半導体やプロセッサに統合されて機能する。前回の投稿の『「業界最高のエネルギー効率」の次世代MRAMの開発、IEDMハイライト論文に選定』では、スイッチング効率の向上とMTJサイズの微細化を中心に、MRAMのハイパフォーマンス、高集積度、最高エネルギー効率を達成しているサムスン電子の技術革新と今後のeMRAMポートフォリオの拡大計画について取り上げていた。今回の投稿では、MRAMの基礎理論を通じてeMRAMについてさらに注目したい。 DRAMとMRAMの違いは? 従来のDRAMは、チップサイズを縮小(Shrink)する技術を通じて集積度を高め、帯域幅を向上させて動作速度を改善しており、モバイルデバイスの普及に伴って省電力のトレンドを追従しながら発展してきた。しかし、電荷蓄積ベースのメモリであるDRAMにはデメリットがある。時間が経つにつれて失われた電荷を補充するため、動作しない瞬間にも持続的なリフレッシュ(Refresh)動作が行われ、待機電力の消費が避けられない。また、集積度が高くなるほど、セル間の干渉現象が深刻化し、微細工程を高度化する上で制限がある。 一方、MRAMは、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)のユニットセル(Unit cell)の抵抗変化ベースのメモリである。電荷の代わりに「スピン」を用いるため、ほぼ永久的にデータを保存できるほか、待機電力を使用しないため、デバイスやインフラの総消費電力を削減して、高いエネルギー効率を実現している。 MTJとは?メリットと改善点 MTJは、MRAM動作原理において中核的な存在である。MTJは、2つの強磁性金属層(Ferromagnetic Layer)の間にトンネルバリア(Tunnel Barrier)として使われる絶縁膜が挿入された3重構造となっている。2つの強磁性金属層のうち、一つは磁化方向を調整できる自由層(Free Layer)で、もう一つは磁化方向が固定されている固定層(Pinned Layer)である。 *強磁性:外部の磁場がない状態でも磁化される物質の磁気的性質
すなわち、MTJは、自由層と固定層の相対磁化方向によって素子の抵抗が変わり、MRAMのReadとWriteは、このように変化する抵抗値を利用する。この2つの磁性層の磁化方向が「平行(Parallel)」であれば低い抵抗値を、「反平行(Antiparallel)」であれば高い抵抗値を持つ。二進法で表されるロジック「0」と「1」は、この抵抗値によって決まる。 初期のMTJはDRAMと同様に集積度が高くなるにつれ、セル間の距離が近くなり、これによる干渉現象と磁場の影響で誤差が生じるデメリットがあった。この初期段階の問題を改善した方式がスピントランスファートルク(Spin Transfer Torque、STT)、すなわち電流誘導スイッチングである。 従来のMRAM方式は電流をベースに磁場を発生させて自由層の方向を変えていたが、STT方式はMTJに直接電流を流して自由層の磁化方向を変える。この方式は、セル間の干渉現象を解消して集積化技術の限界を乗り越えるソリューションである。同技術を採用してeMRAM技術の高度化に取り組んでいるサムスン電子は、ファウンドリ分野における最もエネルギー効率の高い主力製品としてeMRAMを供給している。サムスン電子はこのような取り組みを続けていくことで、「顧客を通じて人類の生活を便利で快適にすることに貢献する」というミッションを持続的に実現していくだろう。 * NVM(Non-volatile memory):不揮発性メモリ