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[Memory Tech Day 2023] ソフトウェア中心の自動車の未来

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メモリ容量と速度を高める理由として、コストパフォーマンスの追求以外に何があるだろうか。自動車分野では、ソフトウェアで定義された自動車のコンピューティングインフラは、他の分野では「あったらいいけど、なくてもいいもの」として思われる最先端のテクノロジーを実現する上で欠かせない要素となっている。 例えば、自動車を作る上で何億行ものコードが必要なソフトウェアについて考えてみよう。自動運転機能、アップグレード可能なインフォテインメント、拡張されたOTA(Over-the-Air)アップデートの仕組みの導入に伴い、コードの行数もあっという間に数十億に達するようになっている。その上、新しいアプリケーションに必要なストレージまで考慮すると、さらなるメモリ容量と帯域幅の改善が喫緊の課題となる。 (メーカーにおける全ソフトウェアスタックの内部制御及びIP所有権の確保を目標とする)垂直統合型モデルへの業界の流れや中央集中型コンピューティングアーキテクチャへの移行は、より少ないながらも強力なプロセッサが共有メモリやストレージにアクセスするようになることを意味する。 このようなトレンドをハードウェアで実現する場合、次のような要素が求められるのは必然である。
    • より広くて高い帯域幅のメモリバス
    • 複数のアプリケーションで使える安全な仮想化スペース
    • 顧客ごとに「再発明」しなくても製品を差別化できる柔軟なチップパッケージモデル
    • 拡張やカスタマイズのために簡単に取り付けることができるストレージ
また、これ以上に重要なのは、品質管理である。コンポーネントが少なくなるため、一ヶ所で障害が発生すると、その影響は致命的なものになる可能性がある。新しい設計、検証、テスト方法を通じてコストを抑えながらも機能に直結する品質管理が実現できる。 発表者は、ソフトウェアで定義された自動車における自律性への道のりと中央コンピューティングアーキテクチャの統合に対するインサイトを提供し、サムスンのメモリソリューションがどのように自動車産業のイノベーションをリードしているかについて発表を行った。   セッションの冒頭でDonovan Hwangは、次世代のインテリジェントモビリティアーキテクチャとトレンドの概要について説明した。
    • 自動車は、半導体分野で最も急速に成長している市場の1つであり、現在一般的な車両に搭載されている約1,000個のチップは、近い将来に3倍になると予想されている。
    • 垂直統合とは、メーカーが中核要素のサプライチェーンを独自で構築することを意味する。
    • 今日の分散型ECU(電子制御ユニット)からクラスター化されたドメイン及びゾーン中心のモデルへとアーキテクチャが移行することに伴い、ソフトウェアの処理方法、つまり、ソフトウェア中心のモデルに根本的な変化が起きている。
垂直統合トレンドの一環として、ソフトウェア中心の開発が社内で行われることが重要な要素として浮上している。
    • 自動車はコードで動作する。(現時点で)必要とされている約1億5,000万行のコードは、自動運転車の場合は50億行を超えると予想されている。
    • 100の言語からなる150のソフトウェアモジュールによって、すでにOTA(Over The Air)アップデートは困難な作業となっている。
    • 外部のサプライヤーからIPライセンスの提供を受けるモジュールの場合、OTAアップデートを有効にすることがさらに困難になる予想されている。
中央集中型ソフトウェアモデルへの移行は、今後の拡張を管理する上で鍵になるが、現在のように分散型でアウトソーシングが多く、ほとんどがその場しのぎで行われているソフトウェアに対するアプローチ方法では、目標を達成することが非常に難しいだろう。 ただし、この課題を解決すると、ソフトウェアアップグレードやアプリケーションに活用可能なユニバーサルOTAソフトウェアのダウンロードやインストールのインフラが整えられるようになる。携帯電話と同様に、自動車もApp Storeや機能アップグレードの購入から得られる自動車のアフターセールス収益も大幅に増加すると予想されている。
Rohit Bholaは、次世代のインテリジェントモビリティアーキテクチャのソリューションについて、現在の一般的なメモリ技術と自動運転機能が普及するにつれて必要となる高容量ソリューションを対比して詳しく説明した。 車載用アプリケーションにおけるDRAMのニーズの増加に対応するため、
    • 現在のX32 LPDDR4X 4.266Gbpsは、x64 LPDDR5X 8.5Gbpsに移行される予定である。
    • より多くの自動運転機能が導入されるにつれ、LPDDR5X 8.5Gbps、GDDR6 12Gbps、及び GDDR 732Gbps(1ピン当たり)は、必須メモリ帯域幅を提供する基本的な技術になる。
    • 完全自動運転が実現される未来には、高帯域幅メモリ(HBM、3Dスタック型DRAM)への移行が欠かせない可能性がある。
未来の自動車へのニーズを満たすために進化するNAND
    • 現在のソリューションであるeMMCは、強固な基盤を提供している
    • 最高の構成変更を実現するため、サムスンは、車載グレードの取り外し可能なSSDを発売している
    • 限られた容量内でストレージの効率を高めるため、サムスンはCMM-HC(CXL Memory Module - Hybrid Compute)データ圧縮ソリューションを提供している
ユニバーサルチップレットインターコネクト(UCIeチップ間インターフェイス)のような新しいチップパッケージ技術は、未来のメモリ速度/容量/コンフィギュラビリティソリューションをより高速で実現できるエンジンになるだろう。   次のセッションでは、Yuchul(Mike)Hwangが、自動車業界の厳しい要件を満たすためのテストと品質管理の重要性及びカスタマーサービスの対応に伴う徹底した管理・監督について説明した。 通常の商用製品の故障率が100ppmであるのに対し、自動車部門の故障率は、製品の全寿命を通して1ppmという驚くべき数値を目標としている。これを達成するため、サムスンは自動車グレードの認定要件を満たし、自動車の電圧と極端な温度範囲で可動試験を実施している。しかし、サムスンのイノベーションは、次のようなプログラムを通じて、このような基本的な要件をはるかに超えている。
    • 新しい世代の開発の早い段階から検知方法論を導入する「シフトレフト」戦略を使用して検証を改善している。
    • テスト期間を2倍に増やし、表示電流レベル、耐食性、衝撃及び振動耐性などに関する信頼性テストを追加することで、通常のAEC-Q100テストを超える。
    • 返品された部品の故障解析のため、経験豊富なシニアエンジニアグループを構成し、故障の根本原因を迅速に特定、2週間以内にFAレポートを提供する。
    • - 毎日、工場のパフォーマンスを再評価し、品質が「優秀」以下のものは、自動車製品のフローから除外することで、最高の製品だけを選択する。
このような方法論は、サムスンの最大の差別化要素の一つになっており、詳細なプレゼンテーションを通じて、なぜサムスンがこの分野のリーダーであるかがよくわかる。