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【CES2025イノベーションアワード受賞インタビュー第2編】Exynos W1000、特別な日常を提供するスマートウォッチの頭脳

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2024年11月、サムスン電子が世界最大のIT展示会「CES2025」を控え、合計29件のイノベーションアワードを受賞した。半導体部門の「CESイノベーションアワード」受賞インタビューの第2編はスマートウォッチの頭脳であるウェアラブル専用プロセッサ、Exynos W1000だ。Exynos W1000はウェアラブルプロセッサ業界で初めて3ナノメートル工程で設計され、速度と電力効率の二つを実現した。開発を担当したAP開発室のムン・ヒョンソクTL(Task Leader)と製品技術チームのファン・ギョジンさんに詳しい話を聞いてみた。
 

ムン・ヒョンソク(Task Leader)
ムン・ヒョンソク(Task Leader)
ムン・ヒョンソク(Task Leader)
ムン・ヒョンソク(Task Leader)


Q. CESイノベーションアワードを受賞したExynos W1000について簡単に紹介してください。

ムン・ヒョンソクTL : Exynos Wシリーズは、スマートウォッチのためのウェアラブル専用プロセッサです。スマートフォン用のプロセッサに比べ、サイズを縮小しながら電力効率を最大化したという特徴があります。特に今回CESイノベーションアワードを受賞したExynos W1000は、ウェアラブルプロセッサで初めてbig.LITTLE構造を採用し、前作に比べてCPU仕様を高め、電力効率の高いウォッチフェイスを実現するために別途のAOD(Always-on Display)エンジンを導入しました。また、Exynos W1000は、最新の3ナノメートル工程を活用したサムスン電子システムLSI事業部の初の製品であり、チップのサイズと消費電力を減らすことができました。 


Q. モバイルプロセッサと差別化された、ウェアラブルプロセッサ開発の課題は何でしょうか?

ムン・ヒョンソク TL : ウェアラブルプロセッサを開発する際に、電力を最大限に抑えることに集中しました。 一方、消費者がスマートウォッチに期待する機能も増え、高度化しているため、性能を犠牲にするわけにもいきません。必要な機能と快適な性能を低電力で長く維持することは最も難しいですが、重要な課題です。


Q. ウェアラブルプロセッサの必須条件は低電力だと説明しましたが、それを実現するためどのように努力しましたか?

ムン・ヒョンソクTL : 私たちが持っている低電力設計のノウハウを全部盛り込んで開発したのが、Exynos W1000です。ウェアラブル製品に特化した3ナノメートル工程と様々な設計技術を使いました。 実際に製品を使うときのシナリオに合わせて、低消費電力を優先したのです。また、モデムなど様々な機能が低電圧電源でも動作できるよう、機能ごとに動的電圧と周波数スケーリング(Dynamic Voltage Frequency Scaling)技術を適用したのも一つの例です。 使わない回路には、効率的に電源供給を遮断する技術も適用されました。
 

ファン・ギョジンさん
ファン・ギョジンさん
ファン・ギョジンさん
ファン・ギョジンさん


Q. チップサイズを小さくすることで、スマートウォッチにはどのようなメリットがありますか?

ファン・ギョジンさん : スマートウォッチはスマートフォンに比べてとても小さいため、チップのサイズ自体を小さくすることも重要です。基板上の実装空間を最小化しなければ、バッテリーを入れる空間を最大限に確保することができないからです。Exynos W1000は先端工程である3ナノメートル技術を適用したため、小さな空間に高性能の回路を集積でき、低電力で駆動することもできます。またFOPLP(Fan-Out Panel Level Packaging)とePoP(embedded Package on Package)方式を適用し、プロセッサや電源管理IC、メモリチップまで一つのパッケージに入れながらも、全体的に高さを低くすることができました。 このようにチップの面積と高さを減らせば、スマートウォッチの中にバッテリーが入る空間を確保するのに有利になり、スマートウォッチ設計時の柔軟性も向上します。


Q. Exynos W1000に適用されたFOPLPとePoPパッケージング方式について詳しく紹介してください。

ファン・ギョジンさん : 円形ウェハーを使うFOWLP方式とは異なり、Exynos W1000に適用されたFOPLP方式は、四角パネルをベースにパッケージを制作するため、生産性をさらに高められます。 また、従来の方式では、基板を介して下段と上段パッケージの電気的連結を可能にしていたのに対し、Exynos W1000のFOPLP方式は、下段パッケージの周りにある基板の代わりに、パネル上の再配線層(RDL:Re-distribution Layer)を活用します。これにより、パッケージの全体的な高さを減らすことができました。

また、ePOPとは、eMMC、DRAM、コントローラで組み合わされたメモリパッケージを、下段部のプロセッサと電源管理IC(PMIC)の上にPOP(Package on Package)で積み重ねるパッケージング技術を意味します。 パッケージの上にパッケージを積み重ねることで、2つのパッケージが実装される空間を1つに削減する効果があります。
 


Q. 性能の観点からExynos W1000はユーザーにどのようなメリットを提供しますか?

ムン・ヒョンソクTL : ウェアラブルプロセッサとして初めてbig.LITTLE構造を採用し、計5つのコアが搭載されました。おかげで前作に比べてアプリを起動する時間も最大2.7倍速くなり、様々な機能がスムーズに作動されるように改善されました。 製品のラグが軽減されたとの評価を見る度、胸がいっぱいになります。またウォッチフェイスを低電力で実現するため、新しいAODエンジンを導入しました。 きれいな時計画面を常に点灯させながら、長く使えるようになりました。
 


Q.
現在、スマートウォッチは日常の生産性を高める道具であり、個性を表現するファッションアイテムになっています。Exynos W1000は最近、ファッションテック部門でCESイノベーションアワードを受賞しましたが、このトレンドにどう貢献していると思いますか?

ムン・ヒョンソクTL : Exynos W1000はファッションと機能の両方でスマートウォッチの役割を強化しています。スマートウォッチユーザーは、その日の気分やファッションスタイルによってウォッチフェイスを変えることもでき、様々な種類の運動や睡眠モニター機能で良いコンディションを維持するのにも役立ちます。Exynos W1000は小さく設計された回路を薄いパッケージに実装することで、スマートウォッチの外観をコンパクトに作ることができ、改善された性能とディスプレイ支援で素敵なウォッチフェイスを実現してくれます。またExynos W1000は消費電力を抑えることで、スマートウォッチの実用性を大幅に改善しました。日常だけでなく運動や旅行など特別な瞬間まで、常に個性と機能性を備えたファッションアイテムとして定着したと思います。


Q.
Exynos W1000を開発する際に苦労したことや特別なエピソードはありますか?

ムン・ヒョンソクTL : 新技術の適用だったので、多くの困難がありました。様々な部署の多くの方と一緒に問題を解決したおかげで、CESイノベーションアワードの受賞という良い結果につながったと思います。 前作に比べて比較的長い期間を経て開発・発売されたため、その間に発展した回路設計の技術を適切に適用するのが難しかったです。 パッケージは小さくて薄いため、繰り返し評価中に失くしたり、使えなくなったりして残念なこともありましたが、多くの同僚と共に実験とシミュレーションを通じて原因と解決策を見つけ、開発環境も一部改善することができました。

ファン・ギョジンさん : パッケージ開発をする際に重要な要素はたくさんありますが、パッケージ全体の反り現象を最小限に抑えることが何より重要です。Exynos W1000の場合、パッケージのサイズは前作より大きくなりましたが、従来の製品より薄く作らなければならなかったため、反りを抑えることが非常に難しい課題でした。反り値を抑えるために数多くのテストを行い、新しい工程を導入し、多くの方と一緒に努力しなければなりませんでした。数多くの調整を経て、目標数値を達成した時の喜びを忘れられません。

 

Q. 今後スマートウォッチは消費者に、どのような役割を果たすと期待していますか?

ムン・ヒョンソクTL : スマートウォッチはスマートフォンと共に、私たちの日常で最も身近なものになりました。 多くの視聴覚情報を伝えながら、より広い世界につなげるスマートフォンとは異なって、スマートウォッチはユーザーが自らをケアすることに貢献できる最適な手段だと思います。サイズが小さく低電力の製品を求める現代のニーズだけではなく、消費者がスマートウォッチを使う姿とニーズを調べ続けて、それを実現する技術を準備したいと思います。

ファン・ギョジンさん : スマートウォッチは健康モニタリング、心拍数測定、GPS機能などを提供し、スマートライフを目指す人々の必需品となっています。 今後、人工知能や機械学習、リアルタイム通訳などを活用して、より高度化されたカスタマイズサービスを提供し、ユーザーによりスマートな生活を提供する必須アイテムとして位置づけられることを期待しています。


これまでスマートウォッチの中核部品であるウェアラブルプロセッサ、Exynos W1000の開発秘話を聞いてみた。 「CESイノベーションアワード」を受賞したExynos W1000は2025年1月7日から10日まで、米国のラスベガスコンベンションセンターで見ることができる。