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Exynosモデム5400:非地上系ネットワークパワーの活用

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この記事は、Exynosモデム5400の次世代機能を紹介するシリーズの第2部になります。 最初の記事は こちらをご覧ください。

 

非地上系ネットワーク(NTN)とは?

日常生活では、建物の上に設置されているアンテナやその他のネットワーク機器に簡単に接することができます。これらはスマートフォンなどの機器を無線で接続できるようにする地上ネットワーク(TN)の基本的な場所、基地局の重要な指標です。非地上系ネットワーク(NTN)は、従来の接続モデルとは異なる衛星、ドローン、または空中のプラットフォームを使用して接続を確立します。

衛星は地上の基地局のような制限がないため、GPSや海外放送、気象観測、長距離通信などに広く利用されてきました。衛星ベースのNTNは、砂漠や海といった地上ネットワークが届かない場所との遠隔通信を可能にしました。また、災害や紛争により地上ネットワークが中断されても継続的に運用可能なため、安定性が向上するメリットもあります。しかし、従来の衛星ベースのネットワークは衛星電話とのみ互換性があり、地上ネットワークに接続できない場合、ユーザーは別の衛星電話を持ち歩かざるを得ないというデメリットがありました。

しかし、通信技術は進歩し続けています。新しい宇宙の時代が始まり、1スマートフォンは実用的に衛星接続を利用できるようになりました。特に民間企業は、緊急救助用の衛星通信や再活用可能な衛星打ち上げ用ロケットなどの宇宙通信開発に乗り出しました。これらの進歩により、ExynosモデムがリードするNTNは、通信技術の次世代革新となりました。

 

NTNにはどのようなメリットがあるか?

地上ネットワークは整備された場所での接続は非常に簡単ですが、遠隔地や山岳地帯では接続が困難になります。デッドゾーンとも呼ばれる電波が繋がらないエリアは、他のユーザーと連絡を取りたい、または連絡する必要があるユーザーにとって課題となります。

例えば、アメリカのイエローストーン国立公園やモンゴルのゴビ砂漠のような場所になると、地上ネットワークに頼る通信は非常に困難です。嵐で孤立し、電波が届かないような状況ならどうすれば良いでしょうか? NTNを使用すると、問題なく連絡を取ることができます。これは、NTNが地上ネットワークの制限を克服し、どのような環境でも安定した通信を維持するからです。

特にNTNは、開発途上国などが新技術通信ネットワークのインフラを構築する必要があるものの、地上ネットワークに投資する十分な資本が不足している場合に有益です。NTNは、より様々な分野でより幅広い接続を提供するだけでなく、低コストで実現します。また、速やかに構築ができるため、すべての地域がカバレッジに含まれると同時に、ネットワークに接続することが可能になります。こうしたメリットは、地上ネットワークからNTNへの移行の強力な基盤となります。

NTNは日常の通信に向いているだけでなく、災害や紛争で地上ネットワークが利用できなくなる場合にも重要になります。特に地上ネットワークは、地震などによって基地局が故障した場合に通信ネットワーク障害が起こる可能性があります。その場合、被災者が大切な人と連絡を取ったり、助けを求めたり、重要な避難情報にアクセスできるようにすることが大事です。

 

NTNの主な種類は何でしょうか?

さまざまな高度にある衛星ネットワークがさまざまな地上デバイスに接続されるイラスト、NB-IoT NTNおよび5G(NR) NTN技術の主な特徴を強調。
さまざまな高度にある衛星ネットワークがさまざまな地上デバイスに接続されるイラスト、NB-IoT NTNおよび5G(NR) NTN技術の主な特徴を強調。

NB-IoT NTN(狭帯域IoT NTN): NB-IoTは、セルラーの通信帯域を使用して様々なデバイスやサービスに接続するために開発された、低消費電力広域技術です。NB-IoT NTNは、NTNをNB-IoTフレームワークに統合させることで、遠隔地や接続が難しい場所にあるデバイスとセンサーをネットワークに接続させることができます。現在は主に高軌道(HEO)と静止軌道(GEO)衛星が使用されており、今後は低軌道(LEO)衛星の使用も予定されています。これは狭帯域(180kHz)を利用したLTEベースのNTN技術でもあります。

NB-IoTをNTNと統合すると、IoTアプリケーションの範囲と到達範囲が向上し、田舎や遠隔地でもIoT接続が可能になります。これにより、IoTサービスのカバレッジと信頼性が幅広く拡大され、多くの潜在的なアプリケーションを利用することができます。

5G NR NTN(5G新無線NTN): 5G NRの規格を採用した5G NR NTNは、NB-IoT NTNより改善されたデータ速度、低遅延、大容量といったメリットがあります。他にも強化されたモバイルブロードバンドサービスを含む様々なアプリケーションに対応することも目指しています。5G NR NTNの場合、静止軌道(GEO)衛星は地球からの距離が遠く、ブロードバンド信号を処理することができないため、低軌道(LEO)衛星を使用する必要があります。

従来のLTE衛星通信: 衛星に基地局を設置することで、従来のLTEネットワークを活用することが可能になり、企業ではすでに低軌道(LEO)衛星にLTE基地局機能を実装しています。これにより、従来の常用デバイスは追加のアップデートなしで、衛星通信を利用してテキストを送受信したり、インターネットに接続できるようになります。衛星は決められた軌道に沿って移動するため、デバイスと衛星間のチャネルを事前に予測することができます。

衛星との距離が遠いことやドップラーシフトによりネットワークの遅延が生じますが、2これらの問題は事前に補完することで3地上ネットワークのように通信することができます。もちろん、実際には転送遅延や衛星間通信時間、衛星からゲートウェイへのデータ転送時間などの問題により、提供できるサービスの種類に制限が生じる可能性もありまが、低軌道(LEO)衛星は低コストであるため、数多くの衛星が地球のあらゆる地域をカバーできるようになればサービスの利用可能性と利用率は増加すると予想されます。

 

NTNテクノロジーをけん引するExynosモデム

サムスン電子システムLSI事業部では、5G NTNの規格をベースに衛星技術を開発し、Exynosモデムのリファレンスプラットフォームと低軌道(LEO)衛星間のNR NTN通信に成功しました。サムスンはMWC20234で、モデムを用いた5G NTNライブ接続の双方向SMS送信とビデオストリーミングを披露し、次世代ワイヤレス通信を紹介しました。

また、サムスンシステムLSIテックデイ2023で、NB-IoT NTNと5G NR NTNを同時にサポートするシングルチップソリューションであるExynosモデム5400を発売しました。NB-IoT NTN技術を利用し、電波が届かないカリフォルニア州のレッドウッド国立州立公園の一部で撮影した双方向SMS送信の成功事例をライブデモビデオで公開しました。これは、Exynosモデムが通信インフラが不足している地域でも、より多くの人々が通信できるようにするという次世代技術の実現を明確にする証でした。

こうした技術的成果は2024年にも続いています。2月には、Skylo社と共同開発したExynosモデム5400ベースのリファレンスプラットフォームが、NB-IoT NTNチップセットとして正式に認定されました。

 

Exynosモデム、ハイパーコネクティビティの夢を実現

サムスン電子システムLSI事業部は、通信業界における長年の先駆者・革新者として、NTN技術のさらなる発展に取り組み、より多くのデータをより迅速に送受信できるNB-IoT NTNと5G NR NTNの技術開発に注力しています。

この技術のメリットには、山頂から海の中まで、地球のどこでも接続可能な信頼性のあるユビキタスカバレッジが含まれています。また、今までデッドゾーンとみなされていたエリアにも接続できるため、緊急サービスを要請したり、家族や友人とリアルタイムでコミュニケーションを取れるなど、安全性が向上します。Exynosモデム5400は、NB-IoT NTNチップセットとして正式に認定されているため、ユーザーは継続的にネットワークを活用して革新的なサービスやアプリケーションを利用することができます。従来の衛星サービスに関連する莫大なコストなしで、NTNテクノロジーの広範なカバレッジの提供により、競争力のある価格でカバレッジの向上が可能になるのです。

このような取り組みにより、信頼性の高いアクセスを実現し、消費者と企業の両方に手頃な価格を提供します。 最終的に、これらの開発は技術的な能力を発展させるだけでなく、ユーザー経験を大きく向上させます。

 

 


1 ここ数年、「宇宙新時代」といった言葉が注目を集め、宇宙探査や宇宙旅行についての関心が高まり、関連商業活動が活発になっています。.
2 5G NR NTNおよび従来のLTE NTNから起こるドップラーシフトは、衛星が地球を周回する時に衛星とユーザー間の相対的な動きによって無線周波数が変化するため発生します。 これによって、受信信号の周波数が元の周波数と異なり、信頼性と品質が低下します。
3 まず、衛星の軌道と速度を考慮してシフトを正確に予測します。 次に、送信信号の周波数を事前に調整し、受信信号を元の周波数と合うように復元することで正確な通信が可能になります。
4 モバイルワールドコングレス(MWC)は、モバイル端末関連機器メーカー向けに毎年開催される国際見本市です。