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サムスン電子、2023 OCP APAC Tech Dayで技術ソリューションとオープンコラボレーションの拡大によるメモリウォールの解決策を発表

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サムスン電子は7月4日、ソウルで開催されたOCP(Open Computing Project)APAC Tech Dayに参加した。約10カ国から約1,100人が参加した今回の行事で基調講演を行うと共に次世代メモリソリューションを公開し、高い関心を集めた。 今年からOCP Koreaはアジア太平洋全域に拡大され、初めて2023 OCP APAC Tech Dayというイベント名で開催された。OCP(Open Computing Project®)は、2011年にデータセンター関連の技術革新のために始まったもので、これまで300以上の技術を発表、世界中の有数のIT企業が参加する世界最大の技術革新団体に成長した。オープンソースによる技術共有とイノベーションの重要性にいち早く気づいたサムスン電子は2015年、OCPのCommunity Memberから始まり、2022年からは最高レベルのPlatinum Memberとして技術的に貢献。OCPエコシステムの成長のための中核的な役割を果たしてきた。 技術のリーディングカンパニーが、ある時点から壁に直面し破壊的なイノベーションを行うことが困難になることをイノベーターのジレンマ(Innovator's Dilemma)という。今回の基調講演で、サムスン電子はメモリウォールを乗り越えるための技術と次世代の製品ソリューションを紹介し、メモリエコシステムを構成する複数のIT企業との協業を通じ、技術的な進展を成し遂げようとするオープンイノベーション(Open Innovation)を強調した。本記事では、サムスン電子がどのようにメモリ技術の限界を乗り越え、破壊的なイノベーションを続けていくのかを紹介する。 4つの次世代メモリソリューションを公開 サムスン電子は既存のメモリ階層構造の限界を乗り越え、Data Centric Computingのパフォーマンス向上に大きく貢献するPBSSD、Memory Semantic SSD、第2世代SmartSSD、Memory Expanderなど、4つの主要次世代メモリソリューションを公開し、高い関心を集めた。 □ 「柔軟な容量可変性を提供する超高容量ソリューション」、PBSSD PBSSD(Petabyte Scale SSD)は、用途により容量を可変できるペタバイト級の超高容量ソリューションで、より高い信頼性(Reliability)と、柔軟に容量を可変できる拡張性(Scalability)を提供しつつもメモリシステムの電力を効率的に管理し、データセンターのラック(Rack)の集積度を向上させた製品だ。 □ 「データ移動の効率化」 Memory Semantic SSD Memory Semantic SSDは、CXLインタフェースを通じデータを転送すると共に内部のDRAMキャッシュメモリがデータの読み取りと書き込みを効率的に処理できるようにすることで、メモリとストレージ間のデータの効率的な移動を支援する。 □ 「ストレージ内の演算処理」、第2世代SmartSSD 第2世代SmartSSDは前世代の製品に比べ演算パフォーマンスが2倍以上向上しており、ストレージ内でデータの演算処理が可能なプロセスを内蔵し、CPU、GPU、RAM間のデータ移動を最小化することでシステムパフォーマンスとエネルギー効率を高める。 □ 「テラバイトスケールへの拡張」、Memory Expander CXLインターフェースベースのMemory Expanderは、1台のサーバーあたりのメモリ容量をテラバイトスケールに増やすことが可能でCXL 2.0のコア機能であるメモリプーリング(Memory Pooling)を支援する。メモリプーリングは、サーバープラットフォームで複数のCXLメモリをまとめてプール(Pool)を作り、複数のホストがプールからメモリを必要に応じて使用できる技術で、CXLメモリの全容量を遊休領域なしに使用できるようにする。 サムスン電子の基調講演:Memory Wall を解消する技術ソリューションの公開及びオープンコラボレーションの拡大の強調 サムスン電子半導体事業部門ソリューション開発チーム長のパク・ジョンギュ(常務)は、「オープンコラボレーションの拡大による新しいチャレンジの克服(Overcoming New Challenges through the Expansion of Open Collaboration)」をテーマに基調講演を行った。 現在、メモリ産業が解決すべき課題はメモリウォールである。人工知能(AI)やビッグデータなどの技術革新が社会全体を揺るがすデジタル大転換時代にデータ量は幾何級数的に増えており、今後、このような増加傾向が続くことは明らかである。この過程で帯域幅(Bandwidth)、容量、遅延時間(Latency)、電力など、4つの面でメモリパフォーマンスがCPUの発展速度に追いつかないメモリウォール現象が発生した。Memory Wallは、機械学習のデータ処理速度と処理量の足かせとなり、全体的なシステムパフォーマンスの低下に影響を与えている。
JongGyu Park, SVP, Solution Product & Development Team at Samsung Semiconductor, delivers the keynote speech.
JongGyu Park, SVP, Solution Product & Development Team at Samsung Semiconductor, delivers the keynote speech.
▲ サムスン電子ソリューション開発チーム長のパク・ジョンギュ(常務)
□ 2つの技術ソリューション:新しいメモリ階層構造の導入とData Centric Computing サムスン電子は、メモリウォールに対する2つの技術ソリューションとして、新しいメモリ階層構造の導入とData Centric Computing技術の導入を提案した。既存の階層構造は小さいデータを迅速に処理するには効果的だが、ビッグデータや機械学習などの大量なデータを処理するにはボトルネックの発生による限界が存在する。従って、各階層間のパフォーマンスギャップを補うためのPBSSD、Memory ExpanderなどのActive Memoryを通じ、システムパフォーマンスを最大化できる新しい階層構造の導入が求められている。 Data Centric Computingは新しい形態のコンピュータアーキテクチャで、従来の方法とは異なりデータが保存されているところで直接演算を行い、システムパフォーマンスを大幅に向上させる。特に大量のデータ処理が不可欠な機械学習などの次世代アプリケーションで発生するデータの移動距離及び時間の増加により、システムパフォーマンスが低下する問題を画期的に改善する。 □ グリーンコンピューティングを実現するための努力 メモリウォールによるシステムパフォーマンスの低下はデータ処理においてさらに多くのエネルギーを消費するため、この問題を解消することはエネルギー効率と持続可能性を求めるグリーンコンピューティングと密接な関係にある。また、幾何級数的に増加するデータ処理の過程で発生する大量の温室効果ガスの排出を減らすため、世界レベルの協力と対応が求められる中、サムスン電子は昨年9月、2050年カーボンニュートラルの目標を掲げた「新環境経営戦略」を発表し、炭素、水、廃棄物、汚染物質の分野において環境への影響を最小限に抑える具体的な目標を策定し、力を尽くしている。 サムスン電子では、生産するすべての半導体製品の炭素排出量の算出及びモニタリングのための全過程評価プロセス(Life Cycle Assessment, LCA)を独自的に構築して適用しているほか、IMECのSSTSプログラムへの参加を通じ、持続可能な半導体エコシステムに向けて協力している。 * IMEC:Interuniversity Microelectronics Centre * SSTS:Sustainable Semiconductor Technologies and Systems サムスン電子は最後にオープンイノベーション(Open Innovation)を強調した。華城キャンパス内のSMRCに設けられたOCP Experience Centerでは、パートナー会社、OCP会員会社、学会など多様なIT関係者と共に技術的な難題を解消するための共同の取り組みやオープンソース開発など様々な協力が行われる予定だ。同センターでは、サムスンが開発及び量産するOCP認証製品を経験できるようにすると共に次世代メモリソリューションとペタバイト規模のストレージを活用したソリューション開発及び検証などを行うことで、オープンイノベーションのハブとして成長していく方針を明らかにした。 *SMRC(Samsung Memory Research Center) 技術ソリューションとオープンコラボレーションの拡大を通じメモリウォールを乗り越え、メモリ分野で破壊的なイノベーションを続けていくサムスン電子の未来に期待が高まっている。