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最適化されたDDR5 DIMM用ソリューション: 最先端サーバーメモリモジュールを支える力

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メモリは重要です。本当に重要です。しかし、私たちは時に、期待される技術的進歩を実現する上で、メモリモジュール、すなわちDIMMが果たす重要な役割を見落としがちです。DIMMの市場全体の見通しは概ね安定していますが、AIおよびクラウドサービスの拡大により、サーバーの容量需要が増加し、それに伴って必要なDIMMの数や、大容量・高速化のニーズも高まっています。クライアント市場においては、容量要件が飽和状態に達する中、必要とされるモジュールの数は比較的限られています。特にノートパソコンでは、携帯性の重視が高まっており、スリムなフォームファクターを持つデバイスの採用が進み、オンボードDRAM(LPDDR、低消費電力DRAM)ソリューションが好まれるようになったことで、モジュール需要の成長は制限されています。こうした市場の急激な変化の中で、サーバーの安定稼働を確保することが重要となっており、それに関連するDIMM部品の役割も大きくなっています。このような環境下で、サムスンは長年培ってきたモバイル電源管理IC(PMIC)の専門技術を活かし、顧客ニーズに応じた製品や技術を提供しています。

サムスンは2017年に初めてDDR5 PMIC市場へ参入しました。この動きを経て、同社は2021年にDDR5 DRAMモジュール向けの初のPMICをリリースしました。従来は、マザーボードがPMICを通じてモジュールに電力を供給していました。しかし、DDR5への移行により、JEDECはPMICをモジュール内部に組み込むことを義務付けました。この分野のリーダーとして、サムスンはJEDEC規格に準拠した製品を製造しており、業界最高水準の効率と堅牢な設計を常に目指しています。このアプローチはPMICに限られたものではありません。同社はDDR5モジュールに必要な製品ラインアップも拡充しており、顧客にトータルソリューションを提供することを最重要目標としています。

これらの取り組みは、シリアルプレゼンスディテクト(SPD)および温度センサ(TS)の開発から始まり、参入障壁が比較的高いクライアント用クロックドライバ(CKD)やバッファ製品の開発へと拡大しています。これらすべては、サムスンが市場をリードしていることを示す最新の証拠です。しかし、これらの開発は具体的にどのようにしてサムスンをリードさせているのでしょうか?
 

PMIC:中核となる電源インフラ


大都市では、何千人、場合によっては何百万人もの人々が、毎日A地点からB地点へ移動しています。このような都市においては、公共交通機関、つまり地下鉄システムが都市機能を維持する鍵となっており、それがなければ乗客は目的地にたどり着くことができません。DIMMにおいて、PMIC(電源管理IC)はまさにこの地下鉄システムのような存在であり、必要な量の電力をDRAMやCKD、SPD、TSといった周辺部品を含む各ICに供給します。SPD(シリアルプレゼンスディテクト)は、どの乗客がどこに、どのくらい行くのかを決定するため、地下鉄の運行管理当局に相当します。このようなシステムにおいて、PMICはすべてが正常に機能するための重要なインフラ要素です。

PMICの進化に伴い、電源チャネルの数および種類も増加しており、サーバー製品はクライアント製品に比べて、より多くのチャネルと高い電力容量が求められます。そのため、サーバー製品には4チャネルの降圧コンバータとデュアルLDO(Low Dropout Regulator、2LDO)が使用され、クライアント製品には3チャネルの降圧コンバータと2LDOが使用されます。当初はサーバー用とクライアント用にそれぞれ1製品のみを計画していましたが、DRAMモジュールの容量と速度が増加するにつれて、必要な電力を異なる方法で供給しなければならないことが明らかとなり、製品の多様化へとつながりました。12
 


DDR4では、PMICは外部、すなわち基板上に実装されていました。これは不利な点であり、電力がモジュール外部から供給されると、配線の長さが増え、スロット/モジュールのゴールドフィンガーの接触抵抗によって電力効率が低下するためです。さらに、PMICがモジュールの特性に合わせて調整されていないことで最適化が行われず、マザーボード上のノイズに対する脆弱性も生じます。DDR5はこれらの課題を解決するために、PMICをモジュール内部に直接実装する方式を採用しています。この調整により、システム全体の効率が向上し、電力インテグリティ特性の改善によって、DRAMへの安定した電力供給が可能になります。安全性と堅牢な設計は、他のどのPMIC特性よりも競争力があり、サムスンのPMICは、JEDECの規格を超える基準に基づいて設計されています。一例として、同社の入力電圧は180%以上の安全性を確保しています。3

SPD/TS:運用管理

PMIC(電源管理IC)がモジュール内に内蔵されるようになったことで、ホスト(CPU)とDRAM(DIMM)間の通信には、より多くのアクティブ要素が必要になりました。また、DIMM内のアクティブ要素を制御・管理するためのインターフェースハブの搭載も重要です。その結果、DIMMのデータを格納する記憶装置(EEPROM)としての役割を担っていたSPD(シリアルプレゼンスディテクト)に、I2C(Inter-Integrated Circuit)/I3C(Improved Inter-Integrated Circuit)ハブ機能が追加されました。これにより、SPDは単に情報を記録するだけでなく、初期ブート時にDIMM内部のアクティブ要素を管理する機能を持つようになり、その役割は拡張され、重要性も高まりました。

DDR5の前世代においても、DIMM/システムが効率的に動作するよう評価を行うための温度センサは既に搭載されていました。しかし、DDR5は速度と容量が向上した分、温度に対する感度も高くなっています。高温は誤動作のリスクを高めるため、DDR5ではセンサが温度をより精密に監視し、各温度レベルに応じた適切な処理を実行します。これには、ICの動作速度を下げる処理や冷却の強化などが含まれます。これは、以下の表に示されているように、温度センサにより高い精度が求められていることを意味します。4
 


CKD:性能を高める存在

これまで、クライアントDIMMは一般的にCPUあたりのDIMM数が少なく、配線長も比較的短かったため、バッファチップは必須ではありませんでした。しかし、DDR5のデータ転送速度が向上し(6400MT/s以上に達する)、クロックバッファが必要となったことから、JEDECは6400MT/sからの十分な性能を確保するため、DDR5クライアントモジュール内にCKD(クライアントクロックドライバ)を搭載することを要求し始めました。こうした変化に対応する形で、サムスンは業界最先端プロセスを新製品に採用し、6400MT/sから9200MT/sに至る幅広いDDR5規格全般に渡って優れた性能を確保する一歩を踏み出しました。特に9200MT/s規格は、業界で初めて最高速度域をフルカバーしたという点で、注目すべき成果です。
 


サムスンは、PMIC技術の開発と安定した製品の競争力ある価格での提供において、長年の実績を有しています。業界標準を満たすトータルソリューションの追求は、顧客を第一に考える半導体メーカーとしての姿勢を示しており、生産コストを削減するターンキー製品ソリューションの継続的な提供にもその姿勢が現れています。このようにして、AI時代においてサムスンは、事前検証済みの互換性やアクティブ部品の運用を通じて、開発リソースの効率向上を実現しています。技術がますます高度化する中で、このアプローチは関係者全員の成功を支える土台となっています。

* 掲載されているすべての画像はイメージであり、実際の製品とは異なる場合があります。画像はデジタル処理、修正、または加工されています。

* すべての製品仕様は社内テスト結果に基づくものであり、ユーザーのシステム構成により変動する可能性があります。実際の性能は使用条件や環境によって異なる場合があります。 


1) サーバーモデル:PMIC5000、5010、5020、5030
2) クライアントモデル:PMIC5100、5120、5200
3) ゴールドフィンガーとは、PCBやDIMMの端部にある金メッキ接点で、メモリとマザーボード間の信号および電力の伝達を可能にする部分です。
4) JEDEC規格:TS5111, TS5110 シリアルバス熱センサ、Rev. 1.3(2020年9月19日)