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[Memory Tech Day 2023] 未来に向けたメモリー

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メモリーデバイスは物理的なサイズが小さいため、その存在感は世界の中で重要視されていないように思われるかもしれません。しかし、メモリーはデータセンターを中心に、急激に変化している世界において主役となっているといえます。昨年、米国のサンノゼで開催されたサムスンメモリーテックデーでは、これらのテーマに関する詳しい説明が行われました。以下の内容は、テックデーのトラック6「システムレベルの協業と新たな機会」のプレゼンテーションを要約したものです。 発表者は、DRAMとフラッシュストレージの目覚ましい進化を追い風に、グローバル市場の中心であるデータセンターでダイナミックなクラウドを実現できたと講演しました。PCIe 6.0はPCIe 5.0を改善したもので、新しいプロジェクトを活性化するための設計パートとIPベンダー間の協業を通じて実現できます。 しかし、エネルギー消費の増加と天然資源の枯渇を伴わず、いかにクラウドの容量と性能を高めることができるのかが問われています。インテリジェントかつ丁寧に設計された技術は、100年以上にわたって続いてきた二酸化炭素の排出量の削減に貢献します。 小さなメモリーデバイスに、世界から大きな期待が寄せられています。その期待とサムスンの役割について考えてみます。 将来、メモリーデバイスを使用してデータセンターを構築する企業は、次のような役割を果たすものと見られます。
    • さらに高度なプラットフォームの迅速な展開に特化した、協力パートナーとのスーパーネットワークを通じてサーバを設計します。
    • リスクとコストを負担せず、技術を飛躍的に発展させる専門ラボで設計と理論のテストを行います。
データセンターが稼働すると、次のことを行うことができます。
    • 海中で海水により冷却することで、メモリーデバイスをより高速で稼働します。
    • デバイスの場合、さらなる高性能化や大容量化とともに、一層の低消費電力が求められます。
    • サーバのライフサイクルにわたり、膨大な数のデバイスが再利用されます。
データセンターのユーザーは、「クラウド」を介してアクセスできます。
    • 大手多国籍企業から小規模の新興企業まで、各ユーザーの特定のニーズに合わせたソリューションを提供します。
    • スケーリングの容易さや、コストとセキュリティとのバランスを保ちつつ選択したパブリック、またはプライベートクラウドを運用することができます。
こうしたデバイス技術をリードしているサムスンは、より良い未来に向けて、次世代の技術計画と環境保護に対する責任が未来のメモリーソリューションにつながることを強く認識しています。 セッション1 セッションの冒頭で、クラウドプラットフォームグループを率いるキム・ヒョンジンは、パブリッククラウドとプライベートクラウドのメリットとともに、サムスンが独自のクラウドを自社内に取り入れた理由について述べました。この10年間、クラウドビジネスは、毎年約20%成長してきました。 パブリッククラウド 様々なパブリッククラウドが人気を集めている背景には、次のような理由があります。
    • 従量の課金モデルは、動的に変化するワークロードを処理するために適切な数の仮想化されたCPUを生成することができるサーバで多く使われています。
    • パブリッククラウドデータセンターの実現に使用されるハードウェアは、スタンダードなモジュール型設計(OCP原則に沿ったホストプロセッサ、メモリー、ストレージ)を通じて、様々なニーズに合わせて適応することができることから、コストパフォーマンスに優れています。
    • 共有リソースを大規模に拡大すると、トータルコストを削減できます。
    • より効率的なエネルギーの使用方法や大規模な環境で性能を発揮できる高度な冷却システムの導入などを通じて、持続可能な資源調達を強化することができ、カーボンフットプリントの管理とともに、より環境に優しいITにつながります。
    • 十分に文書化されたメカニズムと広く理解されたAPIにより、クラウドで新しいプロジェクトを簡単に行うことができます。
しかし、すべてが理想的であるというわけではありません。仮想化されたCPUは、ハイパーバイザーによって実現・管理されます。コードのコンパイルのように計算量は多いものの、変動が激しい作業では、ハイパーバイザーは最大需要に合わせて資源供給を行います。この場合、200%のオーバープロビジョニングが発生することもあります。そのため、仮想化アプローチでは、専用のベアメタルリソースに比べ、コストがかかる可能性があります。 サムスンの自社内クラウド サムスンが自社内クラウドの開発を選択した背景には、次のような理由があります。
    • 国家安全保障:貴重な技術は、プライベートクラウドに保存されてこそ、安全に守ることができます。
    • 主要オペレーションの最適化:各製造工程には独自のローカルITの最適化(製造グループとITグループ間の緊密なコミュニケーション)が求められ、自社内の環境でよりコントロールしやすくなります。
    • 規模:膨大なクラウドコンピューティング性能とストレージ容量が必要であるため、サムスンは、独自のプライベートクラウドを導入することが合理的だと考えます。
    • イノベーション:独自のプライベートクラウドを所有することで、最先端技術の実験・開発を行うことができます。また、サムスンでは、リファレンスアーキテクチャや仮想のユースケース、開発の加速化に向けた製品のテストベッドを提供しています。
セッション2 セッション2では、サムスン電子のIP開発担当のクァク・ミョンボがメモリーIPと電子設計自動化をテーマに、現在と未来における技術の需要に応えるための協業の重要性を強調しました。 PCle 5.0 サムスンのPM1743は、SSD最速を誇っており、ボード設計は次の問題を解決するカギとされています。
    • 高速によるチャネル性能の障害
    • 挿入損失、反射損失、漏話
    • 入出力の障害とシステム機能の問題
こうしたニーズに応えるため、サムスンは次のように顧客のボード設計をサポートします。
    • チャネル分析
      - TDR (Zo、反射)
      - フルチャネル挿入、反射損失、漏話
    • チャネルの最適化
      - 差動設計
      - 不連続点の最小化
    • OMT予測
      - 入出力マージンシミュレーション
      - シミュレーションとテストの相関関係
また、サムスンはセットレベルDRAMのPI分析や高速低電力化に対するニーズの増加、DRAMの電流増加傾向、セットパワーネットワーク設計の問題などを踏まえ、早期電力整合性の最適化を支援します。プロセスは、次のように行われます。
    • セットメーカーの顧客がシステム情報を提供
      - システムプリント基板設計、キャップと電力用半導体素子モデル
    • サムスンがセットレベル分析を支援
      - DC解析(IRドロップ)&パワーネットワークインピーダンス
      - パワーネットワーク設計の最適化
      - パワーノイズレベルの予測
その結果、IRドロップの改善により、セットレベルシステムのPI性能が平均25%向上しました。 PCle 6.0 ストレージインターフェイスは、eMMCのパラレルインターフェイスから、5Gモバイルアプリケーションと自動車アプリケーションの両方に欠かせない技術であるユニバーサルフラッシュストレージ(UFS)のLVDSインターフェイスへ移動しています。モバイルアプリケーションでは、挿入損失によりPAM4信号が必要となります。
    • PCIe 6.0を使用すると、信号インターフェイスがNRZ信号のレベル2から、ギガビットイーサネットで使われるPAM4信号のレベル4へ移動するため、データを確認するためにはボード設計に対する様々なアプローチが求められます。
    • クロック・データ・リカバリのロジックは、インターフェイスの速度を制限する要素であるクロックリカバリループの遅延時間に焦点が当てられており、PCIe 6.0ではより多くのデジタル作業が行われます。


a signal processing pathway for PAM4 data transmission
a signal processing pathway for PAM4 data transmission
サムスンはPCIe 6.0 IPの早期共同検証を進めています。パートナーのテストチップを使用し、プロトコルレベルを早期にテストすると、市場投入までの時間を短縮することができます。 サムスンとパートナーは、単一のキャンバスイニシアチブの2.5D/3DIC設計プラットフォームを通じて、事前に検証されたワークフローを顧客に提供するために協力しています。
    • ネイティブ3Dフロー
    • システム計画
    • 分析(SI/PI/Thermal/IR-drop)
また、サムスンは電子設計自動化のパートナーと協力し、顧客とともにオープンプラットフォームのバリューチェーン構築に取り組んでいます。サムスンではこれを3ウェイ・オープン・イノベーションと呼びます。最先端のツール、設計フロー、設計方法の理論を組み合わせた設計標準を使用し、このオープンプラットフォームを開発しました。 セッションの最後に、Synopsys社のMike McSweeneyは、Synopsys社のメモリーIPに関する早期検証協業の概要について説明しました。 セッション3 メモリーテックデーのセッション3では、サムスン電子のメモリー商品企画チームのプログラムマネージャーであるYvette Lee(Ph.D.)が、サムスンメモリーリサーチクラウド(SMRC)について発表しました。SMRCは、顧客とパートナーが小規模データセンターを使用してアイデアの実証実験を行うことができる協業プラットフォームで、コンポーネントやシステム、ソフトウェア、アプリケーションなどの専門家に24台のサーバラックを収容できるラボを提供し、テストや検証を行うための400GBに当たる内部サービスネットワークも手掛けています。 このような先進技術のプラットフォームから、何が得られるでしょうか。
    • メモリーセマンティックSSD:標準的なブロックデバイスの代わりにCXLを活用
    • スマートSSD:CPU使用率とデータ転送のボトルネックを軽減する処理技術を搭載
    • FDP SSC(QLCベースのSSD):NVMeゾーン名前空間(ZNS)を使用し、ホストとデータをメディアに配置するSSDの間にゾーン化されたブロックストレージインターフェイスを公開
    • 超高密度ストレージ:ラックスケールのスペース効率を高めるペタバイトスケールのストレージソリューション
    • サムスンのテレメトリ分析プラットフォームを実現するストレージデバイス:デバイスの点検と故障予測用
このラボでは、RedHatのOpenstack(IaaS)/Openshift(PaaS)、VMWareのvCenter/Tanzuやベアメタルといった様々なプラットフォームを通じて、デバイスの性能を比較することができます。OSにはCentOS/Ubuntu、RHELなどがあります。 分析のためにお気に入りのデータベースを追加できます。Oracle DB、Maria DB、MongoDB、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)や人工知能(AI)/マシンラーニング(ML)/ビッグデータアプリケーションなどで多く使われるデータベース、MYSQLやPostgreSQLなどがあります。

a flowchart illustrating a technology stack for a DevOps or IT automation environment at SMRC
a flowchart illustrating a technology stack for a DevOps or IT automation environment at SMRC
また、現在および今後発売されるメモリーとストレージ技術を組み合わせて使用することができます。
    • CMM-D(DRAM用のCXLメモリーモジュール)
    • CMM-H/HC(ハイブリッド/ハイブリッドコンピューティング)
    • FDP(フレキシブルデータプレースメント)
    • CSD(コンピューテーショナルストレージデバイス)
    • NPU(ニューラルプロセッシングユニット)
    • DPU(データプロセッシングユニット)


a schematic representation of a server's hardware specifications
a schematic representation of a server's hardware specifications
セッションの後半では、米国のサンノゼにあるSMRCのIsaac Choiが、SMRCの実力を証明するための4つの取り組みについて発表しました。 CSDを使ったLLMトレーニング
two cases of storage connectivity: the conventional case with SSDs and an improved case using Computational Storage Devices (CSDs)
two cases of storage connectivity: the conventional case with SSDs and an improved case using Computational Storage Devices (CSDs)
セッション4 セッション4では、チェ・ジャンソクとチェ・サムジョンが、今後のカーボンニュートラル社会に関するサムスンのビジョンを紹介し、商品のリサイクルだけではなく、本来の価値を一層活かすことができるように「アップサイクル」する「循環型経済」について説明しました。このビジョンは、サムスンが自社はもちろん、顧客による二酸化炭素の排出量を削減するために導入したプロセスと手続きに焦点を当て、世界中で行われている環境、社会、ガバナンス(ESG)のイニシアチブを中心に展開されます。 セッションの前半では、サムスン電子の新事業企画チームのチェ・ジャンソクが、カーボンニュートラルの達成に向けたもう一つの手段として、DRAMとSSDの再認証に対する概要ついて説明しました。後半では、サムスン電子の素材技術チームを率いるチェ・サムジョン(Ph.D.)が、素材の観点からESGの概要を説明し、サムスンの具体的な取り組みを紹介しました。
    • 地球温暖化係数(GWP)を大幅に削減した新しい工業用ガスへの転換
    • フォトレジストの使用量を大幅に減らすとともに、同一かつ高品質な結果を実現する新しいRRC(Reduce Resist Coat)技術
    • 装置や供給ユニットで、ガスを回収して再利用する新しいガス回収技術
    • ウェハ搬送容器の再利用


a comparison between a basic warranty process where server components are discarded after use, and an extended warranty process involving a recertification service by Samsung
a comparison between a basic warranty process where server components are discarded after use, and an extended warranty process involving a recertification service by Samsung
このプレゼンテーションを通じて、現在サムスンで行われている、卓越したメモリーに関する研究と計画が、明るい未来への可能性を示していることが分かりました。