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[System LSI Tech Day 2023] ハイパーデータ:人間の五感の限界を超える

サムスン電子システムLSI事業部、システムLSI Tech Day2023でモバイルイメージセンサー、車載用イメージセンサー、ディスプレイIC分野の成果を披露

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技術が急速に発展している中、近い将来デジタル製品は人間の感覚を模倣してデータを検知、処理、反応できるようになることが予想されている。これを受けサムスン電子は2023年にCIS、オートCIS、ディスプレイICなど、ハイパーデータソリューションに重点を置き、システムLSIヒューマノイドの実現に向けて大きな一歩を踏み出した。「システムLSI Tech Day 2023」ではハイパーデータが主なテーマとして取り上げられ、ハイパーデータがシステムLSIヒューマノイドの将来にどのような役割を果たすかについて活発な議論が行われた。 革新的なイメージセンサー サムスン電子システムLSI事業部センサー事業チーム長イム・ジュンソ(副社長)は、冒頭のハイパーデータ基調講演で、「人間の目を超えて:イメージセンサーの進化」というテーマで発表を行った。イムは、夜空の天の川を撮影した写真を見せて聴衆の注目を集めた後、この写真がスマートフォンで撮影されたものであることを明らかにした。 サムスン電子システムLSIはアイソセルセンサー技術のイノベーションを通じて画質を大幅に向上させた。これらの技術イノベーションは、ピクセル、ダークノイズ、ダイナミックレンジ、量子効率、光学、AI、不可視光イメージングと、大きく7つのカテゴリに分けられる。 解像度の向上とピクセルサイズの縮小 裏面照射(BSI)とFDTI(Full-Depth Deep Trench Isolation)技術は、カメラのサイズを小型に保ちながらもピクセルのサイズを縮小し、解像度を30万画素から2億画素に向上させた。BSIは量子効率を向上させることでこのような変化を実現した。同時にFDTIはピクセルを完全に分離し、高いフルウェルキャパシティを可能にする。 サムスンシステムLSIの200MP(2億画素)イメージセンサーは、ピクセルとマイクロ光学技術の発展によって誕生した。同センサーにより、イムが基調演説で聴衆に見せた画像のようにスマートフォンで天体を非常に細かく撮影できるようになった。 明部でも暗部でも鮮明度が向上 天体写真で星とノイズを区別することは非常に難しいことである。暗いノイズはシリコンから発生するが、このノイズと星を区別するにはノイズを極めて低く保つ必要がある。サムスン電子システムLSIは、より高い変換利得とソースフォロワー(source follower)技術を活用して課題を克服した。新しいDTIセンターカット(DCC)構造はフローティングディフュージョン(FD)ノードのコンデンサ(capacitor)を減らし、ダークノイズを最小限に抑えられる。その結果、より鮮明でグラデーションに優れた夜間撮影ができるようになった。 マルチ変換機能付きのアイソセルのピクセル内部では、明部の低い変換効率で信号の飽和を防ぐと共に高い変換効率で暗部のノイズを最小化できる。この組み合わせにより、1度の露出でHDRの画像が実現でき、動画ではモーションアーティファクトを減らす。 サムスン電子システムLSIはモバイルカメラの感度に大きな影響を与える量子効率を最大化するため、ナノ構造技術も開発している。この技術は、特に望遠センサーに採用される場合にその強みを最大限に発揮できる。 光学とAIが実現するフルカメラシステム 望遠レンズの設計において、焦点距離が長いことは解決すべき課題である。そこでサムスン電子システムLSIではセンサーソリューションに加え、ポップアウト(Pop-out)とレンズオンプリズム(Lens on Prism)のような代替光学技術を披露している。このような技術はレンズの限界を乗り越え、望遠カメラの使用満足度を高める。 さらに、進展したもう一つの技術として関心のある領域のみ高解像度で処理し、残りの画像は人の目のように低解像度で処理するフォービーテッドレンダリング(Foveated Rendering)が挙げられる。同技術は、シーン全体を広角レンズでキャプチャしながらAIトラッカーと200MP高解像度インセンサーズームで関心領域を捉えるアイソセルズームエニプレイス(ISOCELL Zoom Anyplace)ソリューションの基盤となる技術である。 また、マルチスペクトルセンサーでセンサーのポートフォリオを拡張している。グローバルシャッターと飛行時間センサーを含むアイソセルのビジョンソリューションは、可視光線だけでなく赤外線スペクトルを活用し動きと深さを非常によく捉えられる。この技術と実際の適用例について、イムは「可視光線スペクトルに限らず、最終的にはイメージセンサーがシステムLSIヒューマノイドの目として機能することを目指しており、イメージセンサーには無限の可能性がある」と述べた。 安全で快適な運転のための車載用イメージセンサー 同日午後、次世代センサー開発チーム長イ・ヘチャン(副社長)は、「車両の安全のためのセンサー技術」をテーマに車載用イメージングソリューションに活用されるハイパーデータについて発表を行った。現代の運転環境は益々複雑になっており、その要件も増加する一方だが、次世代のセンサーを活用し、先進運転支援システム(ADAS)と自動運転(AD)機能を向上させることで解決できる。 先進運転支援システム(ADAS)と自動運転(AD)では、様々な特性を持つ多様なセンサーが活用されている。高解像度と詳細な色情報を提供するため、検知するだけでなく、認識の役割も担う中核的なセンサー装置である。来年から一部の車両には、8メガピクセル解像度のカメラを12個まで実装する予定であり、より多くのカメラとより高い画素に対するニーズは引き続き増加していくと予想されている。ただし、車載用イメージセンサーにはカメラの数と解像度だけでなく、安全基準を満たすためHDR、LED点滅緩和(LFM)及びモーションアーティファクト低減機能も備えられている必要がある。 サムスン電子システムLSIのセンサーはTrue HDR技術、低消費電力、独自の製造能力など様々な強みを持っている。 140dB True HDRに向けた基盤づくり 大きいピクセルと小さいピクセルがペアになっている先端画素構造であるCornerPixel™、アイソセルDTI(Deep Trench Isolation)、インピクセル高密度静電容量技術のおかげで、アイソセルオート1H1センサーは1回の露出で120dB HDRを実現する。この技術をさらに改善させ単一露光で最大140dBのHDRを実現した。 単一露光に基づくTrue HDRは、すべての照度範囲でLEDの点滅とモーションアーティファクトを最小限に抑えながら、ドライバーがホワイトアウトまたはブラックアウトの状態を経験する可能性を減らす。これは今日のほとんどの業界で使われている多重露光を必要とするHDRとは対照的である。 最高レベルの車載用センサーを独自製作 サムスン電子は世界で唯一、ピクセルとロジックウェハを独自生産できる能力を備えている。さらに、主なADASソリューション業者との強力なパートナーシップに基づき、最近多数のOEMを受注したことで、優れたクオリティと円滑な実装を期待できる。サムスン電子システムLSIは現在、自動車産業におけるパートナーシップの拡大にも積極的に取り組んでいる。 また、サムスン電子システムLSIの車載用センサーソリューションは生産中の唯一の28nmの車載用センサーとフィンフェット(FinFET)のロードマップを備えており、電力消費量が少ないことが特徴である。 ディスプレイとタッチのユーザーエクスペリエンス システムLSIヒューマノイドの未来は、コミュニケーションする人間の能力にかかっている。3番目のハイパーデータセッションでは、LSI開発チーム長イ・ジェヨル(副社長)が、「拡張されたディスプレイとタッチのユーザーエクスペリエンス:OLEDタッチエンベデッドDDI」というテーマで、システムLSIヒューマノイドとユーザー間のコミュニケーション手段としてのディスプレイとタッチ技術について発表を行った。 システムLSIヒューマノイド通信の第一の要件は、ノイズのないタッチである。蛍光灯のような干渉要素があるなど、いかなる環境であっても、ユーザーが途切れることなくタッチできるようにする必要がある。ノイズのないタッチを実現するために必要な周囲環境への耐性を確保するためには、デバイスが45dB以上の高いSNRを持つ必要がありタッチレスポンスの速度は240Hzを超える必要がある。これだけでなく、厚さは益々薄くなりサイズは大きくなるディスプレイのトレンドに応えるためには、耐性と静電容量を増やす必要があるが、この場合タッチの負荷が増加して検知は難しくなる問題がある。業界ではこれに対する解決策を工夫しなければならない。 これを乗り越えるため、サムスン電子システムLSIはOLEDタッチエンベデッドDDI(TDDI)を披露している。これまで分離されていたDDIとタッチコントローラICをTDDIで結び付ければ、映像データを分析してタッチデータを予測することでタッチパフォーマンスを最大化できる。また、消費電力を削減してディスプレイモジュールの設計を簡素化できるメリットがある。 また、OLED TDDIはタッチ工程を80nmから28nmに縮小し、タッチ駆動電圧を下げることで消費電力を削減できる。システムLSIのTDDIは、モバイル中心の最新のタッチパフォーマンスを反映したラインセンサーと480Hzのレスポンス速度に対応しており、低電力ライブラリを活用してSNRを6dB改善でき、消費電力も最大25%削減できる。また、独自のタッチ競争力とTDDIの強みを結び付けたAIベースのアルゴリズムを開発することで外部のノイズを除去し、タッチセンシングを改善すると同時に近接センシングソリューションを実現した。タッチセンサーはこういったタッチセンシングソリューションの高いクオリティにより、近接センサーを完全に代替できるようになった。このような変化は、セット設計の柔軟性を高めている。 イは発表の最後に、「サムスン電子システムLSIは、フレキシブルディスプレイを中心にTDDIを越えて継続的にイノベーションに取り組んでいく」と述べた上で「今後も絶え間ないイノベーションを通じてディスプレイとタッチソリューションを発展させ、人間とヒューマノイド間のコミュニケーションを簡単かつ円滑にすることを目指していく」としてイノベーションに対する強い意志を表わした。 スマートヘルスケアとエコシステムによるシステムLSIヒューマノイド能力の強化 新事業開発チーム長チュ・ヒョク(副社長)は、サムスン電子システムLSIがスマートヘルスケア産業に挑戦する意味について発表を行った。チュは、脈拍を読むなど古代医学で五感がどのように重要な役割を果たしていたか、また、現代のセンサー技術が医療スタッフの業務の効率と医療サービスの質をどのように向上させてきたかについて説明して講演を始めた。 チュは、世界の3大死亡原因について説明した後、途上国はスマートヘルスケア技術を通じて費用を削減し、高齢者に提供される医療サービスの質を改善することで大きな恩恵を享受できると述べた。このような技術が必要であることは明らかであるだけに、スマートヘルスケア市場は近い将来、大きく成長するものと予想されている。 続いて心電図パッチなど、ウェアラブルデバイスの多様な生体信号を処理する第2世代サムスンスマートヘルスプロセッサのS1SBP6Aと地球温暖化により増加している健康問題を解決できる革新的な温度検知アルゴリズムなど、サムスン電子システムLSIが新しいヘルスケア時代に向けて準備してきた様々なハードウェアとアルゴリズムソリューションを紹介した。すべてのソリューションは世界の死亡率の主な原因を解消し、遠隔でより的確な診断とモニタリングを可能にすることで医者と看護師の業務効率性を改善できる。 さらに、研究機関、ハードウェアとソフトウェアの開発者、病院とサービスプロバイダをシームレスにつなげるエコシステムであるサムスンスマートヘルスアライアンス(Samsung Smart Health Alliance)に対するシステムLSIのビジョンについても説明した。このエコシステム内では、病院やサービスプロバイダなどの最終顧客が初期から開発とテストの過程に積極的に参加するため、新しいスマートヘルスケア技術の開発から最終承認まで時間とリソースを有効に使用できる。チュは、「サムスンスマートヘルスアライアンスはアイデア段階から最終サービスまで、みんなが協力して命を救えるスマートヘルスケアの場である」と強調した。 チュは、「ヘルスケア技術とシステムLSIヒューマノイドのコンセプトを組み合わせたビジョンがスマートヘルスケアの新しい突破口となり、システムLSIが人類に大きく貢献していく」として、「皆様にご参加いただければ、スマートヘルスケアはさらに発展していく」と述べて発表を終えた。 スマートヘルスは成長している産業であり、システムLSIはその先頭に立っている。 ハイパーデータとシステムLSIヒューマノイドの未来 より鮮明な画質、車両の安全性の向上、タッチとディスプレイの効率性などサムスン電子システムLSIのすべてのセンサーソリューションは膨大なデータの入力と応答に依存している。サムスンはこのデータを活用して新しい技術を開発すると同時に、私たちの日常を変える技術革新がまもなく現実化することを証明している。人間ほど、いや、人間より正確に検知し反応するデバイスは、すべてを容易に、そして楽にしてくれるだろう。サムスンは革新的な技術ソリューションを通じ、システムLSIヒューマノイドの未来を実現している。