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AIを軸に新たなプロセッサの開発を主導する

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本文の共同著者:Tim Dry、サムスンファウンドリー、エッジ・エンドポイントセグメントマーケティング取締役Santiago Fernandez Gomez、Blaize、プラットフォームエンジニアリング副社長Mahadev Kolluru、VeriSilicon、北米プラットフォームソリューション副社長 Blaizeの新しいエッジAI向けストリームプロセッサは、中小企業が半導体産業のリソースを活用して目標を追求する、新たな機会のケーススタディです。 これまでAIアプリケーションに使われてきた多くのプロセッサチップは、GPUのように最初は別の目的で開発されたものを調整して作っていました。 すでに製品の有用性が十分に立証されていましたし、多くの会社にとってAI用にプロセッサを開発する事業は莫大な資金が必要で、複雑でリスクが高いと思われていたからです。 しかし、AI市場が急速に拡大すれば、エッジとエンドポイントにおいて様々な新しいアプリケーション向けのタスクや状況に合わせたシリコンが設置されるようになり、AI処理のためにクラウドに移動する必要がなくなります。 今、半導体部門がこうしたニーズを満たすためにどのように進化し、AIマーケットプレイスの発展と市場参入を目指す人々にどんな意味をもつのか、その糸口が少しずつ見え始めています。 こうした観点で、エッジAI分野のスタートアップ「Blaize」はケーススタディとして参考になります。 Blaizeは、最近発売されたPathfinderおよびXplorerシステムオンモジュールのプラットフォームと付属ソフトウェアをツールとして、産業やスマートシティ、自動車向けセンサフュージョン、ラストマイル配送、小売アプリケーションの分野で顧客を探しています。 同社は、これらの分野では既存のエッジソリューションが「小さすぎてロードを計算できないか、あまりに高価で商品化できない」と述べています。 Blaizeは、マルチセンサー処理能力、コンパクトなサイズ、極めて低い電力消費、簡単なプログラマビリティを組み合わせることでこの問題の解決を目指し、そのためにサムスンファウンドリーと設計・IP会社のVeriSiliconと共同開発した新しいGSP(Graph Streaming Processor)を使用しています。 なぜストリームプロセッサなのでしょうか? ストリームプロセッサは、複数のソースのグラフィックデータをリアルタイムで分析する際に、メリットを発揮します。 これは工場や小売店で多くのカメラやセンサーを調整し組み合わせて生成されるようなグラフィックデータです。 従来のバッチ指向プロセッサとは異なり、ストリームプロセッサは処理のためにデータを一時的に保存したり、バッチデータを再集計する必要がありません。 そのため、メモリー要件や待ち時間を大幅に削減でき、エッジAIで頻繁に発生する作業の処理効率が向上します。 例えば、BlaizeがGSPを実装することで、Pathfinderモジュールは毎秒10フレーム(計50fps)で100ms未満の遅延で動画ストリーミングをするために5つの独立したニューラルネットワークを提供し、異なるストリームの間で同時に複数のワークロードをサポートすることができます。 これにより、センサーフュージョンや物体検出、画像ノイズの低減、動画およびライダーとレーダーのデータフュージョン、用途に応じたその他の機能をサポートし、プラットフォームは100%プログラミングが可能です。 16 TOPSの処理能力を提供しつつ、GSPの消費電力が7ワットというのは驚きです。 戦略的観点では魅力的ですが、このような機能を安定したリーズナブルな価格のシリコンとして発売するのは難しいことで、最近までこの問題を解決する意志や能力を持った会社はほとんどありませんでした。 これは一般的なカスタムチッププロジェクトの範囲をはるかに超えて、幅広く高度な設計と製造能力、様々な回路IPの統合、大規模な学際的開発チームによる管理と調整が必要で、スタートアップよりも専門性のある大手企業が扱う領域となっていました。 開発を妨げる基本的な障害物(タイミング、物理的レイアウト、メモリー管理など)に加えて、ビジネスや技術的検討の観点からも、リリースまでにすみやかに信頼を確保しなければなりません。 このようなタイプのプロジェクトでは、適切なチャンスは一度しかないため、リスクの補償について検討すべきことも増えます。 開発を成功させる戦略的選択 結果的に、Blaizeはサムスンファウンドリーとの協力を開始し、プロジェクトの目標や要件を説明した際に、ファウンドリーチームはカスタムシリコンソリューションとIPの両方に対応でき、ほかのAI関連プロジェクトを含む幅広い実績を持ったVeriSiliconに加わってもらうことを提案しました。 SAFE™(サムスンアドバンストファウンドリーエコシステム)パートナーシッププログラムのメンバーであるVeriSiliconは、サムスンとの生産プロセスを通じて多くの設計プロジェクトを経験しており、それを基に、開発に関する戦略的な計画と戦術を策定しました。 初めての最も重要な決定の一つは、プロセスノードの選択でした。 利用可能なすべてのオプションを検討した末に、サムスンファウンドリーの14nm FinFETプロセスがほかのノードを超える理想的な選択肢として浮上しました。
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初期のチップのターゲットアプリケーションを考慮し、当時の14nm IPのほとんどが高度なノードでは使えないことを考えると、成熟したプロセスノードが最も適していましたが、今度はコストが問題でした。 VeriSiliconは、数年にわたり14nmでサムスンと協力した経験と専門知識に基づき、これが最初のシリコンを成功させるための最良の選択肢であることを確信しました。 さらに、パートナー企業がBlaizeの初期のGSPコンセプトを最適化したことで、エッジAI向け製品プラットフォームの最も重要な目標を達成できました。 プロジェクトの最初の数か月間、サムスンファウンドリーチームはVeriSiliconと協力して、Blaizeに必要な性能と電力消費の組み合わせを様々な設計方法で試しました。 サムスンファウンドリーは、Blaizeが電力・性能・面積の目標を完全に達成できるよう、標準プロセスを超えたソリューションを提示しました。 また、VeriSiliconは必要なサプライチェーンの調整に加えて、スペックから生産まで完全なシリコンターンキーサービスを提供し、サムスンだけでなく、パッケージ化・組立て・テストを請け負う企業の生産能力を確保しました。
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予定どおりの納品と市場への示唆 全体のプロセスは中国、インド、英国および米国の複数のチームが緊密に連携して進められました。新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、発売の2週間前に各国のオフィスが閉鎖された時もそれは変わりませんでした。 そして、最初のシリコンはリスクの低い経路で送るという事前の決定は、最初のサンプルが到着するときに威力を発揮しました。 通常、最初のシリコンから顧客サンプルまで進むのに6~9か月かかり、全体の生産の実行までは12~18か月程度かかります。 しかし、Blaizeはたった2か月で顧客サンプルを受け取ることができ、シリコンがほぼ完璧であったため、半年後には実際の生産に入ることができました。 Blaizeがとったアプローチは、すべてのAIスタートアップに有効ではないかもしれません。 市場機会、技術、資金調達、組織力と有能なパートナーの特別な組み合わせが必要です。 状況がうまく運べば、既存の半導体リソース(例:サムスンファウンドリー、SAFE™エコシステム、VeriSiliconの幅広い能力)がAI向けプロセッサに前例のない素晴らしい開発経路を提供できることが、GSPプロジェクトの成功によって証明されました。 数年前までは考えられなかったことですが、このようなタイプのプロジェクトは今後ますます身近なものになり、コストも下がるでしょう。 その結果、用途を変更したシリコンでできることに制限されずに、顧客に効果的なソリューションを提供するため、より大きな自由度と範囲を持った新しいAI指向の組織が増えていくことでしょう。